研究室紹介

田中メタマテリアル研究室は、2008年4月1日に発足したナノ光学分野を専門とする研究室です。

立体的な3次元微細構造を直接観察できる3次元光学顕微鏡技術を基盤に,各種顕微鏡光学系や高出力レーザー、超短パルスレーザー、ナノファブリケーション技術、自己組織化現象、生体分子マニピュレ-ション技術、金属ナノ微粒子などの化学的合成手法、分光計測技術、電磁界コンピューターシミュレーション技術などを駆使しながら,ナノ微細構造が作り出す新しい光学/光技術の世界を開拓しています.

特に最近では,金属ナノ構造を利用した人工光機能材料であるプラズモニック・メタマテリアルや、3次元多層テラバイト光メモリなどがトピックスの中心です.

光技術の究極の目標は,光(フォトン)の伝播を思いのままに操るフォトン操作技術の開発です.簡単な虫眼鏡から最先端の顕微鏡や半導体製造装置に至るまで,光の伝播を操作するには,レンズやミラーを配置して,空間中に屈折率の分布を作り出すしか方法がありません.すなわち,光をどれだけ自在に操れるかは,空間中に作り出す屈折率(物質)の多様性と,それをどれだけ自由自在に3次元空間へ配置できるかによって決まります.屈折率nは,比誘電率εと比透磁率μによって構成されますが,これまでの光の世界では,物質のμはいずれも1.0であり,物質毎に異なるのはεだけです.つまり今日の光技術の世界とは,屈折率の多様性という観点からは,2つしかない物理量の片方(μ)の自由度を失った極めて窮屈な世界なのです.

この問題を解決するのがメタマテリアルです.メタマテリアルは,金や銀といった貴金属をナノサイズ共振器アレイ構造に加工して作り出した人工材料です.このメタマテリアルを構成するナノ構造は人工的な原子,分子に対応し,これを使えば,物質の巨視的なεやμを物質そのものの特性とは独立して制御することができます.これは物質が決まればその光学特性も自動的に決まってしまうという従来の常識を覆し,形や構造を制御することで材料の光学特性を人工的にデザインできる新しいサイエンスと,光技術におけるブレークスルーをもたらします.

光学の教科書を開くと,分解能の限界などたくさんの理論的限界が記述されています.しかし,これらはどれも,物質のμが1.0だという前提の上で構築された光学理論から導きだされた結論であって,μ≠1.0の世界が実現できれば,これまでの限界は限界ではなくなります.実際,メタマテリアルを使った光学デバイスでは,従来の光学理論では不可能とされていた光学現象がいくつも見つかっています.私たちの研究室では,このメタマテリアル技術を駆使して,新しい光技術の世界を開き,光を思いのままに操るという夢の実現に挑戦しています.

2009年4月 田中拓男

テーマ

磁場を用いた3次元メタマテリアル加工技術の開発

自己組織化材料を用いたプラズモニック分割リング共振器の作製

グラフェンプラズモニクス

ナノコーティングリソグラフィー法を用いたプラズモニック金属ナノ構造体の作製

半導体微細加工技術を用いた金属ナノ周期構造による高効率光機能デバイスの開発

表面プラズモンによる絶縁体-金属相転移の誘起

設備

加工・処理装置

分析・評価装置

レーザー

数値計算

シンポジウム

このシンポジウムでは,プラズモニクスとメタマテリアルに関する招待講演と当研究室の成果発表を行います.お招きした先生方と密な議論を行うために,会議室レベルの小規模シンポジウムとして開催します.

このシンポジウムでは,プラズモニクスとメタマテリアルに関する招待講演と当研究室の成果発表を行います.お招きした先生方と密な議論を行うために,会議室レベルの小規模シンポジウムとして開催します.

理研メタマテリアルシンポジウム2012
キーワード:プラズモンバイオセンサー,THzケミカル・バイオセンサー

理研メタマテリアルシンポジウム2011
キーワード:量子結合,グリーンデバイス,金ナノロッド

理研メタマテリアルシンポジウム2010
(第9回メタマテリアル&ナノフォトニクスシンポジウム)

問い合わせ先: metssympo2012(at)mets.riken.jp 【(at)を@に変えて下さい】

中央のメガネのようなデザインは、Metamaterialの2つの”m”の字を表すと同時に、メタマテリアルを構成するナノ共振器の形を模しています。2つの色のうち、青色は河田ナノフォトニクス研究室に敬意を表して同じ色を頂戴しました(さらに元を辿れば、この青は理化学研究所のロゴの青です)。これに新しい色として、赤色を加えました。赤と青の2つの色は、電磁気学で重要な、電気のプラスとマイナスや、磁気のN極とS極も表現しています。ロゴを囲む外枠は、金色と銀色の2色を用意しました。金と銀は、メタマテリアルもしくはプラズモニクス分野における重要な金属材料です。

研究室参加希望の方へ

当研究室は、ナノ領域における光学技術の研究に興味のある、広い分野からの研究員を歓迎いたします。以下の分野の少なくとも2つ以上について経験を持ち、かつ他の分野についても関心を持ちながら広い視野で研究を推進できる方が望ましいです。英語による会話、議論、論文の執筆能力は必須です。

1. 電磁気学ならびに量子光学解析とFDTD法や、RCWA法などを用いた電磁界シミュレーション

2. フェムト秒レーザ、OPO、OPA、再生増幅器など超短パルス/ハイパワーレーザ装置とそれを用いた光学系(特に顕微光学系を中心に)の構築

3. 自己組織化現状を利用したナノ構造作製

4. 光リソグラフィ、電子線リソグラフィ、ナノインプリント、真空蒸着、スパッタリングなどの微細構造加工技術

5. SEM、TEM、AFM、STMなどを用いた観測・測定

6. 金属ナノ粒子、ナノロッドなどの化学的合成・調整

7. 遠赤外(THz)~紫外光領域における各種分光測定技術を用いた、資料の電磁気学的評価

雇用形態

現在、以下の形態での採用が可能です。

1. 理化学研究所 基礎科学特別研究員

 2024年度の公募は既に公開されています。

2. 理化学研究所 国際特別研究員

 公募はこちらです。

3. 日本学術振興会 特別研究員

等。いずれの場合も、応募される場合は事前にお問い合わせ下さい。